飲食店社長の意識から始まった労働時間削減計画!今では助成金も有効活用!

2020.07.27

1997年に創業し、年間売上2億5千万円の飲食店。
4店舗すべて、オフィス街の好立地にあり、昼はビジネスマンの利用が多く、低価格でランチを提供している。内装にも拘っており、価格もワンランク上で設定していることから夜はデートや記念日に利用されることが多い。
オリジナルのメニューも豊富で、味や見た目にも定評がある。加えて、毎月メニューを変えるという手の込んだサービスが人気の秘訣となっており、予約のみで満席になることも珍しくない。

【飲食店】労務環境を改善し、社員の定着率をアップ!

従業員を採用するも、すぐ辞めていく

長時間労働と休日の少なさに従業員が疲弊。社長の意識を改革し、労働時間削減へとシフトチェンジ!

創業から20年以上続く飲食店。

従業員数は、総勢約70名。半数が正社員、残りの半数が学生やフリーターのアルバイトスタッフで構成されています。

ここ数年、大きな売上の伸びはないものの、安定した売上が確保できており、着実に利益を出されていました。グルメレビューサイトでも高評価で、長い間親しまれる店づくりに成功されています。

しかし、社長は常に人材不足に悩んでいらっしゃいました。

特に、正社員の人材不足に喘いでおり、やっとの思いで雇用できた社員が入社後3ヶ月を待たずに辞めてしまう、ということも稀ではありません。結果的に、年中、人材確保のためにお金や時間をかけているという状況が続いていました。

また、新しい社員が入る度に指導を任される現場のマネージャー社員にも、だんだんと新人教育に疲れの色が見えてきていました。

そこで、新規採用から視点を変えて、「従業員が働きやすい環境づくり」と「業務のムダを省く」ことに注力するよう提案しました。

当時社員は、昼の開店前から夜の閉店まで勤務しており、少しずつ出勤時間をずらした勤務とはいえ、労働時間は1日10時間を超えていました。そのうえ、休日は月に4、5日という過酷な労働状況でした。

1ヶ月変形の労働時間制を採用しており、月の平均所定労働時間は173時間でしたが、実際には、月に250時間程勤務されていたようです。

社員からは少なからず不満の声も出ていましたが、社長はご自身の修行時代の経験から、このくらいは飲食店では当たり前だという認識が払拭できずにいたようです。

今回の提案により、社長も本腰を入れて労働時間を見直そうと決意したことで、改革が始まりました。

現状 創業20年
月売上2000万円
4店舗(飲食店)
業種 ■洋食店
地元を中心に4店舗を営む。店内のインテリアや内装に定評がある。
年商 約2億5千万円
企業規模 従業員70名

労働環境を改善し、従業員の定着率アップ!

まずは、実体調査のため、月に1、2回行われるマネージャー会議に参加し、ヒアリングを行いました。

労働時間については、アルバイトが多い店舗と少ない店舗で多少の違いはあったものの、やはりどの店舗も、1日あたり8時間を越える勤務をされており、慢性的な残業体質となっていましたし、休日は一律で、4、5日でした。

そこで、労働環境についてどう感じているのか、社員からの声をできるだけ吸い上げていただいた結果、約8割の社員が、「労働時間が長い」と感じていました。

そこでマネージャー社員には、目標値として、月の労働時間を200時間以内にすること、休日は7、8日にすること、そのためにシフトや作業工程の見直しなど、できることは全てやるとお伝えし、本格的な改革が始まりました。

【手法】無駄な時間を徹底的になくし、人員配置の見直し!生産性を落とすことなく労働時間削減!

ランチは利益率が低かったため、回転率の悪い土日はやめて、ビジネスマンが多く利用する平日のみに変更しました。

厨房内の導線を見直し、使いにくい配置のものは全て変更し、ほぼ動かずに調理できるようにしました。また、ひとつの作業にかかる時間を徹底的に見直し、効率の良い調理器具は積極的に導入することで、これまで手作業で行っていたせん切りやみじん切りは、半分以下の時間で行えるようになりました。他にも、壁に線を書く事で、アルコールを計量する時間を省き、3分の1の時間で作れるようになるなど、一つ一つは数秒から数十秒の差ですが、積み重なると一人あたり数十分の時間削減に繋がりました。

さらに店舗で行う業務内容を洗い出し、社員にしかできない仕事とアルバイトスタッフに任せられる仕事に分類。アルバイトスタッフに任せる仕事は、作業に時間数の目安も記載したマニュアルを作成しました。

シフトも見直し、余剰に人員が入っているところは、交代で休日をとるよう変更した結果、月に7日の休日が確保できるようになりました。

【効果】会社全体の意識が変わり、従業員の離職が減った

改革を始め、1年が経過した頃には、労働時間200時間以内、月7日の休日確保を達成しました。

労働時間の管理を明確にしたことで残業代未払いのリスクもなくなり、助成金を活用することもできるようになりました。

これまでは、新しい人材の採用に注力されていましたが、今いる人材を最大限活かせるようにお手伝いをさせていただいた結果、作業効率が上がり、売上が落ちることなく、労務環境が大幅に改善しました。

この間に入社した社員は今も継続して働かれています。

 

コンサルタントからの一言

飲食店は、営業時間が決まっており、営業時間外の時間に準備や片付け(仕込や掃除)を行うため、従業員の労働時間は長くなりがちです。

また、従業の中には、残業は当たり前という意識を持っている方も少なくないため、さらに慢性的な長時間労働を産んでしまいます。

従業員が働き続けることが困難なだけでなく、法律的にも、残業第未払のリスク、36協定の上限時間を越えるリスク、さらに事業主の安全配慮義務違反のリスクといった、様々なリスクがあります。

それを変えるには、社長自身が本気で会社を変えていきたいと意識し、従業員と一丸になって労働時間の削減に取り組まなければなりません。

変革に時間はかかりますが、ひとつずつ見直しをしていけば必ず道は開けるはずです。