【運送業】未払賃金1000万円超のリスクを改善!

2022.02.01

創業40年以上の運送業。
約20年前にお父様から引き継ぎ、社長は2代目。
創業当初からお客様第一主義を掲げており、地域の方々から信頼されています。
当初は長距離がメインでしたが、現在は近距離運送を中心としています。

【運送業】多額の未払残業代!知っておくべき労務リスクと回避のためのポイントとは!

退職した社員からの未払残業代の請求

マイナスをきっかけとし、プラスに変えていく!

突然届いた、弁護士事務所からの内容証明。退職した社員からの、未払残業代請求でした。

請求額は過去2年間の未払金、およそ200万円。社員10名程度の企業に激震が走りました。

また、時を同じくして労働基準監督署からの調査も入り、就業規則の不備を指摘されたため、これらをきっかけとして、労務関係全ての見直しを行うことを決心されました。

就業規則は平成6年に作成したものから変更しておらず、雇用契約書も交わしていないとのことでしたので、まずは一度詳しいお話を聞かせていただくためにご訪問させていただき、現状のヒアリングを行いました。

現状 福岡県直方市で40年以上続く運送会社。
2020年に退職した従業員から、未払残業代の請求があったことで問題が顕在化。
本件をきっかけに、労働条件や就業規則の本格的な見直しを始められました。
業種 ■運送業
近距離の運送がメイン
企業規模 従業員12名(取締役含む)

40年間変わらない管理方法を

未払賃金が発生している企業は非常に多く、ほとんどの企業が抱えている問題といっても過言ではありません。

2020年4月以降には、未払賃金の請求が過去3年間分(これまでは2年間)遡ってできるようになり、企業のリスクもより大きなものになっています。

さらに今後、遡りが5年になりますので、早いうちに対策をすることが非常に大切です。

 

【手法】説明会の開催と労働条件通知書の作成

●時間管理を正確に 
 現在「労働時間管理」を行っている出勤簿等は特になく、タコメーターの記録のみで管理をしていました。しかし、帰社後に荷物の整理をしたり、打ち合わせをしたりと、運転時間以外にも業務を行っている時間があり、それらを正確に管理するため、出社、退社の時刻を報告するようにしました。

●労働条件通知書の整備 
 現状では、労働条件は次のとおりの口約束になっていました。

  ・勤務時間:1日あたり8~9時間

  ・勤務日数:週6日

  ・給与:○○万円(従業員様により異なる)

 この条件は法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えていますが、残業代の明確な区分け(明示)がないため、1ヶ月あたり約30時間程度/人の未払残業代が発生していました。(社長自身も、未払が発生していることに気がついていませんでした。)

そこで、賃金制度を見直し、固定残業手当を新たに創設。口約束の内容をきちんと労働条件通知書に記載し、固定残業手当約30時間分を明確区分しました。

 

●シフトの調整 
 今まで当たり前に週6日で勤務していたものを、なるべく週5になるようシフト組を調整するようにしました。

 

●従業員説明会

 これら変更した内容を従業員の皆様に説明し、改めてご納得いただきました。

【効果】今後の未払賃金発生リスクを最小化!

 従業員説明会では、これまでの会社の認識に誤りがあったことをご説明し、今後の賃金体系についてご説明をさせていただきました。書面だけをみると不利益変更と言える内容でしたが、入社当初には口頭説明をしていた内容だったため、ご納得いただけました。

その後、労働条件通知書をきちんと皆様にお渡しができたため、今後については未払のリスクが最小化されました。

 

コンサルタントからの一言

会社にとって「売上」が攻めなら「リスク回避」は守りです。

従業員様を雇用する場合、労働基準法を始め、労働安全衛生法、労働契約法等のたくさんの法律に則って雇用する必要があります。

その一つ一つを把握することは非常に困難ですが、残業代の未払いについては特に気をつけられた方が良いでしょう。

昨今では、長時間労働の上限規制も明確に示されており、時間外に対する意識も高まってきています。

「従業員様が健康で安全に働けるように、会社が適切な措置を講ずること」これが、引いては会社のリスク回避にもつながります。