【親子間の事業継承】後継者へ株を全て譲渡しない!?その経営者の想いとは

2023.09.13

企業様向け個別支援の事例として、親から子へ後継者の方による「事業継承」をしたい30年続く老舗の工務店様について話を聞きました。

【親子間の事業継承】後継者へ株を全て譲渡しない!?その経営者の想いとは

ご相談された事業者様を教えてください

司法書士法人の代表をしている関係で会合に行く機会があります。そこで知り合って10年ぐらいのお付き合いになる方から、相談があるということでお話を伺いました。

その企業は、いわゆる地場の工務店。30年ぐらい経営されている、老舗の部類です。普通の工務店とは異なり、下請工事を中心に受けておられ、リフォームや戸建てなどを建てる事業をされています。

どのようなご相談でしたか?

相談内容としては、「自分の勤めている会社の経営者が親で、代表をやっているんだけども、事業承継について相談したい、実際に会社に訪問して相談にのって欲しい」というもので、その時点での役職は取締役ということでした。

話をしなければならないのは、当時の社長となります。
また、『事業承継のご相談』というざっくりとした内容だったので、承継するんだろうなということは分かっていましたが、実際にどういう問題があるのか、どういうことが課題なのか等について聞かなければいけませんでした。
私が伺うと、現社長と後継者と私の3人で机を囲み、事業承継についての進め方についてまずは始めました。最初は、ざっくりと事業承継をしたいという相談です。その中で、「株式の時価が高くない段階で譲渡したい」という思いと、「後継者へ全て譲渡するのかどうか」という内容で悩んでいることが分かりました。「譲渡はしたい。だけど、現社長の役員を選任する権利等は残したい」という思いを受け取ったわけです。

具体的に何をしましたか?

基本的に私の業務は、言われた内容についてのみやっていくことが大前提となりますので、「こういう方法がありますよ」と方法論に関してご提案をすることとなります。
会ってすぐのご提案ということで、まずは、議決権についてご案内しました。
これは、株式はほとんど移すけれども、議決権(株主総会の発言権)を残すという方法です。通常であれば、一人1議決権と言い、一人1回、手を挙げる権利があるところを300や400にできるという権利です。
例えば1,000株ある場合、999株を後継者に移し、残りの1株に対して1万株の権利を付与することで、株主総会をコントロールできることになります。
まずは、この内容をご提案させていただきました。

その後は、後継者の方とどういう内容にするのか設計を詰めていかなければなりませんので、何度もいろいろなお話をいたしました。
ただ、一つ気になっている部分がありまして、それは先ほどの「議決権を残す」ことについてです。確かに、社長が、ご自身に権限を残したまま譲渡したいというご相談はたくさんありますが、当時後継者の方は40歳近くで、そのような年齢の方に対して全部譲渡をしない、まだご自身に権利を残したいという意図は何だろうと思ったわけです。
そこで、実際に後継者の方と会って、話をする中で、今回の経緯や譲渡するきっかけについて、どういう話の中でそうなったのかを話すことにしました。

中小企業において親子が経営をしている会社というのは、近いようで遠いと言いますか、親子だからこそ根本について話しにくい、後継者の方が直接話をできてないという部分がよくあります。実際今回も、二人が対峙した時の関係性や雰囲気でそれを感じました。
そこで、課題として与えられた『株式の設定をどうするのか』についてを考えつつ、ここら辺の問題も一緒に考えていった方が事業承継する中でよりいいのではなかろうかと思い、そういった経緯についても聞き出すことにしました。

代表者様の本当の想いとは?

内容としては、方法論を色々提示し、それについてご自身で検討していただく形になりますが、当然そういう中で「全然話ができてないんですよね」っていう話と「話がしたい」という後継者の意向もあり、「そこは私の方からうまく聞いてみます」という感じで、「この譲渡に関してどんな思いがあるんですか」や「残すという経緯にはどんなことがあるんですか」というように、「私が直接聞くようなことでもないと思うのですが」との前置きをしながら、色々、お話を聞いていきました。
親子間の深い部分の話になってきますので、そこは配慮が必要となる大事な部分です。
その中で、「実は、まだ任せられないという想いは、後継者のこういう発言からあったからなんだ」という話をぽつぽつとし始めまして、後継者の方も「いやいやそうじゃない」というような議論へ移行することとなり、恐らく、いままで当事者同士で話し合いができなかったことが今回できて、いろいろな想いをぶつけ合うことができたように感じられました。
そして同時に、私自身、後継者の話をお聞きし、色んな想い、会社への想い、真剣な心の内を知ることができましたので、それについて当時の社長に後継者の思いについてご説明を行いました。
すると社長から出た言葉は、「株式議決権を自分自身に残した方がいいのか、それとももう全部譲渡した方がいいのか、どっちがいいですかね」というものでしたので、その時の話しぶりから察するに、肩を押して欲しいのだと感じ取れたため、私は「社長がいいと感じるのであれば、絶対全部がいいですよ」と即答。そこで、「もう全部でいきます」ということになりました。
要は、話し合うことでいろんな思いが吐き出せたわけです。後継者としたかった話をすることができ、それですっきりしたのだと思いました。

その後代表者様と後継者様はどうなりましたか?

実際は、いろんな提案書をお作りし、結構詰めて色々なお話をしましたが、結局は『全部譲渡』という形で決着。無事に、そのあとの譲渡手続も進み、全ての株式を後継者に移して、後継者の方が社長という立場になりました。

また、この企業は、当初私に、雇用を促進したい旨語っておられました。
その後、雇用をしない形式が多い工務店において、その企業は方針のとおり雇用を進め、社員が非常に多い企業となっています。
そして、新規の事業展開も進め、工務店の分野に関わる下請工事だけじゃなく、BtoC向けのリフォーム等いろんな事業を展開されており、とても順調に成長。利益も売上も上がっているという状態になっています。

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