売上げはここ数年横這いではあるが、業績は決して悪くありません。しかし、いつも資金繰りはギリギリ。
社長自身も現場で活躍する職人であり、仕事を獲得する力はあるが、売上を上げて利益を出すことだけに集中し過ぎて、どうしても経理関係は後回しにしがち・・・
現状 | 創業40年超の老舗企業 |
---|---|
業種 | 建設業 地元を中心に基盤を固めており、玄人受けの技術を持つ企業 |
年商 | 約9千万円 |
企業規模 | 従業員5名(役員含む) |
社長が苦手とする経理をシステム化することで、経費精算や資金管理の適正化とスリム化を図ることができました。
まずは数年分の決算書を確認しました。売上げは横這いとはいえ高水準で推移しており、人件費等も適正の範囲内で利益率も良いものでした。
今回の大きな問題は、多額の仮払金が計上されていることでした。社長へのヒアリングを行っても、よくわからないとのこと。しかも、過去に金融機関へ融資を申し込んだ際にも、この仮払金について内容を尋ねられたことがあったようでした。その時にもよくわからないと回答してしまっていたようです。
仮払金が計上され始めた時期からの帳簿を突合し、社長や従業員の方へ一つ一つ確認していきました。とても時間のかかる作業ですが、このアナログ作業は欠かせません。
仮払金の中身は、大きく2つにわけて
①社長に対するもの ⇒ 実態は社長に対する貸付金
②従業員に対するもの ⇒ 現場が遠方の場合の出張旅費の前渡し分
ということが判明しました。
①は、仮払金ではなく代表者貸付金です。社長は会社から借金していますので、その分の利息もやり取りしなくてはなりません。仮払金に計上したままであることは、会計的にも税務的にも間違いとなります。
②は、出張が終わった後に精算していないということがわかります。精算していないというのは、会社の経費に計上されていない状態となっており、経費の過少計上となっています。結果的に会社は必要以上の税金を払っています。
そもそも仮払金とは、一時的に使用する勘定科目であり、長期に渡って残るものではありません。言い換えると、仮払金が残ったままになっていれば疑ってください。不正経理や不適切経営に繋がっているおそれがあります。
会社にお金がないのではなく、会社のお金を使い過ぎてお金がない、というのが正解でした。
多額の仮払金は、それぞれ適切な科目に振り替えを行い、仮払金は全てなくなりました。そのうえで、経理では仮払金勘定を極力使用しないこととし、現金精算がある場合の会社への精算期日を社内で定めました。
融資の際にも、多額の仮払金は良くありません。仮払金は、会計上は資産ですが、実態のない資産と判断されることがあります。また、社長の貸付金が多いことで、お金にルーズと判断されることもあるでしょう。どちらにしろ、良い結果にはなりません。
これまでの融資は、申し込み額より減額されていたとのことでしたので、これもズボラな経理が原因の一つになっていたと思います。
コンサルタントからの一言