社長の口癖『会社にお金がない!』から始まった資金繰り改善計画!

2020.07.17

社長の口癖は『会社にお金がない』資金繰り改善計画!

ズボラな経理で資金繰り悪化

社長の口癖はいつも「会社にお金がない」

売上げはここ数年横這いではあるが、業績は決して悪くありません。しかし、いつも資金繰りはギリギリ。

社長自身も現場で活躍する職人であり、仕事を獲得する力はあるが、売上を上げて利益を出すことだけに集中し過ぎて、どうしても経理関係は後回しにしがち・・・

現状 創業40年超の老舗企業
業種 建設業
地元を中心に基盤を固めており、玄人受けの技術を持つ企業
年商 約9千万円
企業規模 従業員5名(役員含む)

資金の流れと経理の状況を改めて見直し、経理の適正化に成功

社長が苦手とする経理をシステム化することで、経費精算や資金管理の適正化とスリム化を図ることができました。

【手法】資金の流れに沿った経理の提案

まずは数年分の決算書を確認しました。売上げは横這いとはいえ高水準で推移しており、人件費等も適正の範囲内で利益率も良いものでした。

今回の大きな問題は、多額の仮払金が計上されていることでした。社長へのヒアリングを行っても、よくわからないとのこと。しかも、過去に金融機関へ融資を申し込んだ際にも、この仮払金について内容を尋ねられたことがあったようでした。その時にもよくわからないと回答してしまっていたようです。

 

仮払金が計上され始めた時期からの帳簿を突合し、社長や従業員の方へ一つ一つ確認していきました。とても時間のかかる作業ですが、このアナログ作業は欠かせません。

 

仮払金の中身は、大きく2つにわけて

①社長に対するもの ⇒ 実態は社長に対する貸付金

②従業員に対するもの ⇒ 現場が遠方の場合の出張旅費の前渡し分

ということが判明しました。

 

①は、仮払金ではなく代表者貸付金です。社長は会社から借金していますので、その分の利息もやり取りしなくてはなりません。仮払金に計上したままであることは、会計的にも税務的にも間違いとなります。

②は、出張が終わった後に精算していないということがわかります。精算していないというのは、会社の経費に計上されていない状態となっており、経費の過少計上となっています。結果的に会社は必要以上の税金を払っています。

そもそも仮払金とは、一時的に使用する勘定科目であり、長期に渡って残るものではありません。言い換えると、仮払金が残ったままになっていれば疑ってください。不正経理や不適切経営に繋がっているおそれがあります。

 

 

 

 

【効果】不明になりがちな仮払金も消え、資金の透明化

会社にお金がないのではなく、会社のお金を使い過ぎてお金がない、というのが正解でした。

 

多額の仮払金は、それぞれ適切な科目に振り替えを行い、仮払金は全てなくなりました。そのうえで、経理では仮払金勘定を極力使用しないこととし、現金精算がある場合の会社への精算期日を社内で定めました。

融資の際にも、多額の仮払金は良くありません。仮払金は、会計上は資産ですが、実態のない資産と判断されることがあります。また、社長の貸付金が多いことで、お金にルーズと判断されることもあるでしょう。どちらにしろ、良い結果にはなりません。

これまでの融資は、申し込み額より減額されていたとのことでしたので、これもズボラな経理が原因の一つになっていたと思います。

 

コンサルタントからの一言

たくさんの経営者の方にお会いする機会が多いですが、「決算書の見方がわからない、どこに何が書いてあるのかわかりづらい」という声をよく聞きます。

会社の計算書類には、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書など様々な種類があります。名前に馴染みがなく、しかも、どういったルールに従って書かれているのかがよくわからないのが原因ではないでしょうか。

売上・経費・利益の損益計算書は比較的わかりやすいかもしれませんが、一方面からの視点だけでなく、複数の視点から数値を見ることも大事です。

全てを隅々まで知るには大変かもしれませんが、せめて大事な箇所は見逃さないようにしていきたいものです。