食品の製造や飲食業に使える、ものづくり補助金

2023.07.01

食品の製造や飲食業に使える、ものづくり補助金

『食品製造業×補助金申請』について、中小企業診断士であり、経営コンサルタントでもある川瀬健誠さんにお話を伺いました。

今回お話頂ける補助金申請について、その概要を教えてください。

対象企業は、水産物卸を営む企業様です。
コロナ禍を契機に、ものづくり補助金を得て、加熱調理品の製造や、急速凍結による冷凍食品の製造を行う設備を一式で導入。それまでは、「飲食店に食品を卸す」という柱しか無かったのですが、新しく「調理品の販売」という柱を追加することに成功されました。

卸売業者ということで、元々魚を仕入れるルートはお持ちです。つまり、今までのビジネスを活かしながら、新しいビジネスを打ち出したということになります。既存のルートを辞めるわけではありませんから、経営の柱が二本に増えたことになります。
補助金によってコロナを乗り越え、安心が得られた例と言えるのではないでしょうか。

食品設備の導入により、見込まれたメリットを教えてください。

コロナ禍により、食品業界は大きなダメージを受けました。
飲食店には、国から休業要請が出ましたから、開店できない状態に。そのまま、閉店に追い込まれてしまったお店も少なくありません。
このひずみは、卸売業者や生産者にも波及しましたので、商品を持ったまま販売先がなく、途方に暮れてしまったわけです。

 

そこで動き出したのは、飲食店でした。
接触を回避しながら販売できるスタイルとして、テイクアウトをスタート。また、今回ご紹介のものづくり補助金を活用し、餃子や天ぷら等の専門店開業へと繋げたお店もありました。

 

生産者においても、ECサイトを立ち上げ、卸売業者に頼らない販売スタイルを確立させた方が多くおられます。
皆、コロナ禍でも出来ることを模索しだしたわけです。

 

これは、卸売業者においても同様です。
手元に食品はあるわけですから、それを販売できればいいわけで、コロナによって難しくなったBtoBは一旦置いておき、新たにBtoCのルートを模索することに。そのために必要となったのが、食品を加工するための設備一式であり、ものづくり補助金の活用だったわけです。

今回の企業様においては、手元にある生魚を、あら炊きなど惣菜に加工、急速凍結を行い、直接消費者に販売するというルートを確立させることとしました。実現のためには設備投資が必要であり、そこに、ものづくり補助金を活用するわけです。
手元にある食品、そして今までに培ってきた仕入れルートが活用でき、さらにはコロナが収まった後も見込みのある新事業であり、無理のない計画であるところが大きなメリットと言えました。

ものづくり補助金を得るのは、難しいのでしょうか。

「ものづくり補助金の採択は相対評価である」ということが、ポイントになってくると思います。
これは、単に「良い計画書だから採択される」ということではないということ。
申請のあった事業者様の計画書を評価し、良い順に並べ、「上位から順に採択をする」となるため、どんなに良い計画書を作ったとしても、他の事業者に及ばなかった場合には採択されない、ということになるわけです。

 

この場合、どうしても通したい企業はお金をかけて事業計画書を作ってくるということが起こりえます。
事業計画書を経営者様がご自身で作ることは不可能ではありませんが、コツを知っているか否かが採択に影響を及ぼしてきますから、それを知らない個人様では採択に繋がりにくくなってしまう可能性は大いにあります。
また、事業計画書を作成するために、日常業務が滞るようなことがあれば、元も子もありません。
であれば、「事業計画書作りは慣れている者へ外注する」と割り切った方が、業務上もいいのではないかと思われます。

採択されたことで得られたメリットについて教えてください。

本事業者様は、今まで、BtoBの販売ルートしかお持ちではありませんでした。しかし、設備投資によって生まれた新たな商品、それを販売する先としてBtoCが確保されましたので、これは、今後、同業他社との競争という面においても、大きな武器になると考えられます。
こちらは、新しいチャレンジにより、競争に勝てる体制を作り出せた事例となります。とても有意義な補助金活用例として、皆さまにもぜひ、参考にして頂けたらと思います。

 

今回のような設備投資は、補助金なしでも実現は可能です。
しかし、自己資産と融資だけで挑戦するには不安が付きまといますし、ましてや補助金なしでの投資金額の回収となると多額になりますので、リスク面でも大きなものとなってきます。
補助金を得ることは、リスクを一部、軽減できるということでもあるのだと捉えてもらえるといいのではないでしょうか。

 

また、補助金採択のため、コンサルタントによる事業計画書を作成した場合、そのために収集した各種データも、今後の資産となってきます。
私の場合、補助事業の手引きになるような計画書作りを行っていますから、補助事業の運営時はもちろんのこと、また別の事業を考えることがあった際にも、役立ててもらえる情報だと思います。

補助金申請までの工程を教えてください。

補助金の申請は、以下の流れで行っています。

 

① 希望する投資についてのヒアリング(設備内容、サービス展開等)
② ①に基づき、補助金など最適なサービスのご提案
③ 会社資料をもとに、事業計画の立案
④ 提出資料や加点要素となる資料の準備、整理、作成
⑤ 補助事業計画書の作成、内容の確認

 

企業の現状分析だけでなく、新たに挑戦される事業についての調査も行っています。目指している先の市場がどれほどあるのかを調べ、実現可能性を試算。企業へお伝えするのと同時に、計画書へも反映して参ります。

 

情報収集には時間を要しますから、2か月程度の期間を見積もって頂ければと思います。

設備投資を考えている方へ、ひとことお願いします。

事業計画書の作成においては、以下の内容についても丁寧に精査と実施を行います。

 

・見えないリスクの洗い出し

・法律上、必要な許可の取得

 

食品業界におられるのであれば、食品に関する法律には詳しいことと思いますが、製造と飲食では法律は変わって参ります。そこに気付かず店舗を作り、それでは営業はできないとなれば、大きな損害となってしまいます。
このような失敗は特別なものではなく、往々にしてあること。
コンサルタントの視点をリスク回避に役立てて欲しいと思います。

編集後記

食品製造業において設備投資を行い、新しい事業展開の構築をお手伝いする川瀬さんに、お話を伺いました。
補助金申請の際、必要不可欠となる事業計画書の作成。
無理してご自身で作成するよりも、法律の確認や市場調査など、あらゆるプロセスを担ってもらえるコンサルタントに依頼をした方が、大変有意義であること強く感じました。

コンサルタントからの一言

コロナという大きな壁に阻まれたにも関わらず、補助金を得て新たな事業を展開。利益を生み出す柱を増やすことに成功し、安定を得た事業者様は多くおられます。補助金を、チャレンジにうまく活用して欲しいと思います。