2023.08.19

中小企業における経営者の年齢層が、近年大きく上がっています。1995年のピークが47歳であったのに対し、2015年では66歳。経営者の高齢化が進んでいるのです。
伴って浮上しているのが、事業承継の問題。
後継者不足により、休業や廃業の危機に直面する経営者様は決して少なくありません。
アスリンクでは、お悩みの経営者様より多くのご相談を受け、事業承継セミナーを開催しています。
今回は、事業承継の在り方について、税理士と司法書士の視点より、対談を行いました。

動画でも事業継承セミナーについてご紹介しています

七島 悠介(左) アスリンク所属
七島悠介税理士事務所 代表
税理士
税務コンサルタント
池田 龍太(右) アスリンク所属
司法書士法人そうぞう 代表社員
司法書士

税理士が受ける、事業承継相談とは

顧問先より、引退についての相談が良く寄せられます。
年齢を重ねた社長より、体力面での不安と共に引退を検討されていること、そして後継者の有無や、持たれている株式の扱いなど、いつ、どのようにしたらいいのか、というのが相談の内容です。

 

そのような時、株式の譲渡にはコストがかかるため、まずは評価額を調べることから始めています。

そして承継の方法としては、親族、従業員、M&Aで外部に売却するなど、様々なケースが想定されますから、株価の算定や相続税など、自社で引き継ぐ場合と第三者に売り渡す場合の違い等をお話した上で、そこから「誰に引き継いで欲しいのか」というテーマに移行していくこととなります。

 

経営者様の多くが、先代から承継したのではなく、ご自身で会社を立ち上げておられます。そのようなこともあり、まずは自社の価値を知りたい、とおっしゃられることが多いように感じます。
今の価値を知り、いくらの金額なら売れるのか。
そういった試算を行い、承継のための材料をひとつずつ集めていく作業となることが多いです。

司法書士が受ける、事業承継相談とは

ご相談頂く内容は、大きく2つのパターンとなります。

 

ひとつ目は、事業承継をお子さまにさせたい場合です。
株式については、価値が上がる前に渡しておきたい。しかし、お子さまがまだ若く(幼く)、「承継はさせたいが議決権までは渡したくない」というパターンです。

 

ふたつ目は、第三者への売却意志が固まっており、契約書の書き方や、株主総会の開催について一式をお任せしたい、というパターンです。

 

両方とも問題が具体的で課題も明確であるため、ひとつずつ丁寧にお応えしていく対応となりますね。

最近の相談傾向について

最近、特に、経営者様の年齢が上がっていると強く感じます。皆様、後継者探しに苦慮されており、“後継者不足は社会全体の問題”という印象です。
データによると、ここ20年で経営者の平均年齢が20歳上がっていると言われます。これはつまり、経営者が代わることなく、そのままスライドしているということであり、代替わりが出来ていないことを示しています。

 

“事業承継について悩んでいない企業は無い”と言っても、決して過言ではない段階にあると感じます。
事業承継を考える上で、利害関係者は従業員、取引先、金融機関と、多岐に渡ります。それらとの調整を図りつつ、タイミングも考えるとなると、考えるべきことは非常に多く、大変難しい問題であることがお分かり頂けるかと思います。

事業承継の相談事例

事業承継から、親子間の紛争に至ることもあります。
そのような場合に間を取り持つことができるのは、第三者であり専門家でもある、税理士や司法書士だと感じています。

冷静且つ正しい見解を以て、親と子、それぞれの本当の意見を聞き出すことが大切。
もちろん、M&Aで外部に売却する場合においても、社長の真の意思を聞くことは重要課題となって参ります。

株価を下げて譲渡するためには

まず、現在の株価を算出します。その上で、株価が高くなっている要因を探します。
要因によっては、“一時的に株価を下げる”ことができる場合がありますので、対策を講じて、下がったタイミングで譲渡を行います。

 

株価を下げられない場合には、制度を利用します。
贈与で少しずつ動かすことによって非課税としたり、事業承継税制を活用し、株式移転時の贈与税を猶予(先延ばし)させる方法を使います。

社長の退職と株式譲渡を組み合わせた節税策

株式譲渡による会社売却を行う際、社長(株主)が退職することにより、譲渡対価の一部を退職金として交付し、大幅な節税が可能になる場合があります。

お子さまの意思確認

親の気持ちとしては、「大きく育て上げた会社を引き継ぐことに関し、不満などあるはずがない」という意識が強いのですが、子どもが同様に考えているとは限りません。既にやりたい事があり、引き継ぐ気は一切無いということも多分にあります。

親が作った地盤を引き継ぐのは、決して容易なことではありません。従業員の人生を背負い、自分自身の人生も賭ける、相当なプレッシャーの上に成り立つものだと、親は心得ましょう。

事業承継を考えるタイミングで、きちんと意思確認を行うことをお勧めしています。

国も推進する事業承継

事業承継5ヶ年計画と題し、国も中小企業の事業承継が進まない現状に危機感を持ち、環境の整備や後継者マッチング支援など、各種後押しを提示しています。

使いにくい部分も少しありますが、要件に収まるように可能な限りのサポートをさせて頂きますので、こちらも活用していけたらと思っています。

事業承継をお考えの方へ

事業承継は30年に1回の大きなイベントとも言われています。「まだ先かな」と思われていても、事業承継の無い企業はありません。事業承継のタイミングはいつか必ずやってきます。ですから、早めに準備しておいても良いわけですし、ぜひ、進めて欲しいと思います。

 

後継者に渡す、もしくは第三者に渡す。
どちらの場合あっても、時間をかけて丁寧に行うことでより優位な方向に進めることが可能です。年齢を重ね、時間的制約が生まれてしまえば、足元を見られ兼ねません。
暦年贈与等は時間を要しますし、遺言を活用するなど、様々な方法がありますので、予め事業承継セミナーに参加し、多くの知識を身に着けて欲しいと思います。

 

事業承継セミナーに参加した後、「まずはやってみようか」と一歩を踏み出す方が結構おられます。私共が、うまく背中を押すことができたのであれば、それほど嬉しいことはありません。