電子帳簿保存法の税制改正のポイントがわかるセミナー

2022.11.16

電子帳簿保存法の税制改正のポイントがわかるセミナー

過去にも幾度となく改正が行われてきた電子帳簿保存法。令和4年の税制改正にて、2年間の宥恕(ゆうじょ)規定が設けられ、引き続き電子取引情報の紙保存が認められたものの、令和6年1月よりいよいよ電子取引情報の電子データ保存が完全義務化となりました。
セミナーでは、 各種税務相談への対応や電子帳簿保存法の解説を行っています。
今回はその中より、電子帳簿保存法について、西朋美がご説明いたします。

電子帳簿保存法、その概要

昨今のテレワーク普及に伴い、紙書類で行う業務について、効率の悪さが随所で感じられる事態となっています。今回の電子帳簿保存法の改定は、進み行くデジタル化へ対応するためのものだと言えるのかもしれません。

 

そのため、電子帳簿保存法の税制改正における完全義務化は、特定の方を対象にしたものではなく、個人事業主や法人、売上規模、従業員の有無等を問わず、事業を営むすべての方が対象となっています。

完全義務化は令和6年1月~とはなっているものの、正しい内容を知り、理解を深め、間違いの無い対応をしていくためには、残り時間は決して多くはありません。今回の改定が影響する範囲は、思いのほか広いものです。まだ先だからと思うことなく、早めの対策を行って欲しいと思います。

セミナーで行う電子帳簿保存法解説(抜粋)

今回の施行によって変更された内容は以下の通りです。(一部の解説です)

 

 ① 電子データとして帳簿や書類を保存するために必要だった税務署長の事前承認を撤廃。(スキャナ保存も同様)

 ② 電子文書を検索する際に必要となる検索機能の要件を緩和。

 ③ 電子文書存在日時を示すタイムスタンプ要件が、利用しやすいよう緩和。

 ④ スキャナ保存については、適正事務処理要件が廃止され、原本(紙書類)の保管が不要となり、スキャン後はすぐに廃棄可能。

 ⑤ 電子取引については、保存要件に沿った上で、電子データにて保存するよう義務化。

 

変更や緩和の内容について間違った理解をしてしまいますと、処理が大きく変わってしまいます。
セミナーでは、”参加された方に正しい理解を深めてもらうこと”を第一に、取り組んでいます。

『保存要件に沿う』とは

電子帳簿保存法とは、ただ単に電子化や保存を行えばいいというものではありません。
『保存要件』というものがあり、それに沿った対応をしなければならないのです。
決して難しいものではありませんが、間違ってしまうと、せっかくの対応が意味のないものとなってしまいます。
以下の2点を意識した上で、電子帳簿の保存を行って欲しいと思います。

 

まずは、『真実性の確保』
保存された記録に、「改ざん等は行われていない」という確認ができなければなりません。

次に、『可視性の確保』
こちらは、「誰であっても視認・確認ができる状態であるか」ということです。

 

”保存要件に見合った内容となっているか”を確認するには、ある程度の時間を要します。
早め早めの対応を意識して欲しいと思います。

違反した場合の罰則とは

今回の改正では、罰則が強化されているという点についても、気をつけなければなりません。

 

 ① 青色申告を利用している場合、電子取引の電子データ保存を行わないことにより、青色申告の承認が取り消されてしまう可能性があります。あくまで可能性というレベルではありますが、もしそうなると、信用の低下や所得税・法人税の支払いが増加することとなります。

 ② 故意に仮装隠蔽による不正を行った場合には、重加算税が10%加重されてしまいます。

 

知らずに違反していたということのないよう、適切に準備を進めていきましょう。

具体的な対策について

既に何らかの会計システムを利用されている場合には、ご利用の会計システムが電子帳簿保存法へ対応しているかの確認を行いましょう。
場合によっては、追加コストがかかることがあるかもしれません。その点の確認もお忘れなきよう、行って欲しいと思います。
会計システムの活用には費用がかかりますが、お任せすることで、容易に各種要件を守ることができるようになり、業務の負担軽減に繋がります。
利用の可否は、費用対効果を鑑みて決めて欲しいと思います。

 

そして、会計システムを利用されていない場合には、これを機に電子帳簿保存法に対応したシステムの利用について、利便性と費用感について、検討を行って欲しいと思います。

 

追加コストをかけずに対応したい場合であれば、国税庁等のサンプルを参考に事務処理規定を整備するといった方法もあります。
専用のシステムを用意しなくとも、規定に沿った運用を行えば要件を満たすことは可能です。
それぞれの状況に合わせて、どちらの対応が適切であるか、比較と検討が必要な時期に来ていると言えるでしょう。

 

また、上記と並行して、業務フローも作成して欲しいと思います。
いつ、だれが、どのように処理するのかを決めておくことにより、業務がスムーズに行えるようになりますので、お勧めです。

書類の電子化について

紙書類で保存している企業にとっては、今までは行うことなかった”電子化”という工程が追加されることとなります。慣れるまでは時間も要しますし、大変だと感じられるかもしれません。
しかし、電子化にはメリットもあります。
紙書類を長期間保存しておく必要がなくなり、場所をとりません。紛失のリスクも無くなります。また、企業間での書類の郵送が無くなることにより、輸送費コストの削減も叶うでしょう。

電子化が進むということは、イコール、業務改善や効率化にも繋がります。目の前の”負担”ではなく、その先にあるメリットに目を向け、取り組んで欲しいと思います。

総括

経理作業を経営者自身で行っている企業や、担当者が居ても少人数である場合など、改定がスムーズに行えない事情を抱える企業においては、特に早めの対応が必要です。

電子帳簿について不安を抱えておられる方には、まずはセミナーへ参加し、理解を深めることをお勧めしています。
まずはひとつ。焦らず、対応を進めて欲しいと思います。

コンサルタントからの一言

令和6年1月の完全義務化は、決して先の話ではありません。準備期間を考えると、そろそろ着手しておくべき事柄です。正確な知識の習得を、スタートして欲しいと思います。